不登校
学校へ行けない子供は、決してなまけているのではない。
その子供たちの心とどう向き合うのか。
社会全体、大人たちのほとんどが、解消できない圧迫感や閉塞感のなかにいるのと同様、子供たちの心も、どうにも晴れないもやもやしたものに覆われています。遊びや友達との関わりのなかで、家族との触れ合いのなかで、それらは解消されるはずのものなのに、友だちとも家族とも、本当の心の関わりが持てていないがために、そうはならないのです。
そういった苦しさを持つ子供たちの集まっているところが今の学校です。教師自身も、多くの規制・要求・しなければならないことなどに追われ、子供の心そのものと関わるには無理がある。それが現状です。子供たちは、自分以外の者が自分との比較の対象であるという見方を幼い頃から植え付けられていますから、心を許すことができません。互いに互いの心をうかがいながら、びくびくして“共に”いるのです。教師(大人)に対しての信頼も持つことはできないのですから、当然、学校という場は、「安心できない場」になってしまいます。<br>そこでは本当の意味で“仲良く”したり、“優しく”したりはできません。表面的なつき合い、見せかけの仲の良さ、見せかけの“明るさ”“楽しさ”を演じるしかないのです。
本当に心優しい子供たちにとって、こういった雰囲気は耐え難いものです。その場に身を置くことができないほど。「誰だって本当は仲良くしたい。楽しくやりたい。友だちに何でも話したい。」そう思いながらそうできずにいるみんなの姿。それが分かるから苦しいのです。みんながそうしたらいいのに、と思ってみても、どうしようもできないことを知ったからやりきれないのです。そこでは先生も手助けしてはくれない、そうしようとしてもできない。それが分かるからやがて体そのものが「行くこと」を拒むのです。
人の心の苦しさを感じてしまうこと、そこに満ちている苦しい雰囲気を体で感じてしまうこと、それはその子の責任などではなく、むしろ、心が柔らかく敏感であることの証なのです。そして、そういった繊細さや優しさを理解してくれる者がまわりにいなかったことが彼らを「行けない状況」へと追い込んでいくのです。誰が悪いということではありません。もちろん彼らがなまけようと思っているのでもありません。
親は彼らのことを決して「恥ずかしい」「情けない」などと思ってはなりません。むしろ、自分たちの分からないところで、その子が苦しさを抱えきれないところまで耐えてきた結果なのだと受けとめて頂きたいのです。そして、その苦しさを、せめて、自分たちは理解していこうとしてほしいのです。
分かってくれる者のいることが、彼らが再び心の力を取り戻していく必要条件なのです。
そしてさらには、「学校へ行かせること」を求めないことです。そのために彼らの心を理解するのではありません。学校へ“行かせるため”に彼らの心を楽にするのではないのです。彼らが自分の心、ありのままで生きてくれること、それが彼らがいきいきできることなのですから。その結果として再び登校することを意志してくれれば、それもまた嬉しいことではあります。彼らが、本来の心の輝きをもって学校にいてくれることで、その輝きに触れて、自らも変わっていける子供たちがいるのですから。
しかし重ねて伝えますが、学校や教育そのものが、“健やかさ”から離れている今、「どうしてもそこへ戻る必要はないのだ」という認識を持って頂きたい。子供たちの“心”をそれ以上傷つけないために。
学校へ行けないあなたへ。
どうしても行くことができない自分を責めることはありません。情けなく思うこともありません。だめな人間だなどと思ってはいけません。あなただけでなく、ほとんどの子供たちは学校生活に喜びを見出せてはいないのです。本当は。けれどもそうしていくしかないから、学校へ行き、友だちとつき合い、楽しそうな自分でいようとするのです。本当の自分を見せられないと分かりながらそうしているのです。
あなたの心と体は正直にそれを表現しただけのこと。ですから、自分の心に正直であり続けることはやめないでください。今の社会は、(学校も含めて)「何とかうまくやっていくこと」「自分だけがはずれないようにすること」のために人は生きているようなものです。本当の嬉しさ、本当の楽しさ、本当の安心・・・・とは、自分の心に正直であってこそ得られるもの。今のあなたはそれを取り戻そうとしている途中なのです。初めは両親も「どうして?」「何とか行けないものか」「情けない」「気持ち次第だ」という反応をしたでしょう。しかし、あなたがどんなに苦しかったのか、そして、今の学校がどんなに苦しいところなのかを少しずつ理解していくにつれて、どうすればあなたがあなたらしく生きられるかという視点に立ってくれるようになります。親は、自分の子供が、“世間”という枠からはみ出すことを恐れるものです。しかしそれを越えられた時、あなたとの間に「本当の心の絆」ができあがるのでしょう。両親にとっても、あなたの不登校は、「本当の心」を見ていく機会となるのです。
自分が何をしたいのか、どうしている時が心安らぐのか、何をすると喜びを感じられるのかを見ていくのです。そしてそのうえで、やはり元の学校へ戻ることが自分にとって嬉しいことなのだと分かれば、それを徐々に進めていけばよいのです。無理をすることはありません。
あなたの心の求めるところを正直に見ていく、そこから始めればいいのです。