倒産・失業・リストラ
仕事を失い、収入を得られなくなる不安・怒りは誰にでもあるもの。
その時あなたはどんな心で生きるのか。
厳しい経済状態のなかにあって、“倒産”という結果を受け入れざるを得ない人たちは非常に増えています。会社の大きさにかかわらず、それはもたらされます。しかし、こういった状況のなかで、いつもそのしわ寄せを受けるのは規模の小さなところであり、社会的な“力”を持たないところです。今の社会や経済の仕組みそのものが、“力”“金銭”のあるところにはさらに“力”“金銭”が集まり、“力”が弱く、“金銭”もとどめておけないところからはその両方ともがさらに奪い取られていく、というものです。それだから、弱いところ・小さいところの負担は増す一方なのです。
それは、ひとつの会社(組織)内における各個人についても同じことが言えます。その人の人格や実際の生活、抱えている事情など何のお構いもなしに、会社での位置づけや会社にとって有用かどうかという判断のみで、職を失う者、職場の変更を受け入れざるを得ない者などがでてきます。そこでは、極めて合理的・管理的にそういったことが行われているかのように見受けられます。しかしそこにあるのは、単に、“評価”を判断材料としての処遇のみでなく、今の行き詰まった社会のなかにいる者のかげりの捌け口とされているきらいがあります。
会社の経営上、経費を削減し、人員を整理していくことは、必要なことではあります。しかし今の組織は、あまりにも簡単にそれをしすぎています。辞めさせる者を出しさえすれば、それが経営上の問題の解決になると勘違いしている者が多いからです。
とは言え、実際に倒産し、あるいは失業し、またリストラされた人たちは明日から新たに歩み直さざるを得ません。
倒産の憂き目にあったあなたが忘れてならないのは、“経営者としての責任と誠実な態度”です。少なくとも、あなたに“生活”を預け、信頼に基づいてついてきてくれた者たちがいるのであり、また、仕事上、つながりのできた他の会社もあるのです。その両者に対しての責任については、できる限り誠実な姿勢を貫かねばならないのです。倒産したからそこまで、というのでは、あまりに無責任かつ不誠実すぎます。全てを手放し、あなた自身もどうにもならない状況かも知れません。しかしそうであるならば、なおのこと、そのことに対する“責任”という思いをしっかりと持たねばなりません。金銭的にどうにもならないのであれば、せめてあなたの心と言葉と態度とでそれを相手に伝えるべきです。「詫びる」ということは、素直に自分の至らなさや過ちを認める誠実な態度のことなのですから。
相手に与えてしまった心配・不安・失意・そして混乱。それだけでなく、仕事上のつながりであれば、さらに多大な迷惑をかけることも考えられるのです。そしてそれらに対処する力をあなたがもう、有さないのであれば、「詫びること」しかないのです。たとえ相手がそれを聞き入れてくれなくとも、です。
リストラという、自分の気持ちではどうしようもないものを引き渡されてしまった人は、今や急激に、その数を増しています。しかしそれは、誰のせいと言えるものではなく、まして自分のせいでもありません。そのことで「自分はもうだめだ」と自暴自棄になったり、会社を恨んだりするのでは、新たな道を見出すことはできません。自分の意に反することを受け入れるのはとても辛いことです。この先の暮らし、家族への責任を思うとそこで心をかげらせないのは難しいことでしょう。けれども、その現実は受け入れざるを得ません。今まで会社や組織に属する者として、社会的な位置を確保してきたあなたが、そういった背景をなくすことは“恐怖”に近いものがあるでしょう。しかしこれから先は「どこどこの(会社の)誰々」としてではなく、ひとりの人としての生き方に目を向けていくべき時なのです。もちろん暮らしを営むためには金銭を得なければなりません。一日も早く次の仕事を、とあせる気持ちもあるでしょう。でもその前に、今までの自分は仕事をすることでどんな喜びを得てきたのか、どんな喜びをまわりにもたらしてきたかについて、ぜひ振り返ってみてください。心に余裕のある者がするのではなく、手にしていたものを失ったあなたがするからこそ意味があるのです。この次に何らかの“仕事”をするにあったても、その仕事がたとえどういうものであれ、感謝と誇りを持ってその仕事に携わっていけるための準備でもあるからです。
仕事とは、単に収入を得るためのものではありません。しかし今は、ほとんどの人がそのために“仕事”をしています。会社を失い、仕事を失ったあなた方だからこそ、仕事を離れた“ひとりの人間”としての自分を取り戻す時間が与えられたと考えてほしいのです。失意・失望・投げやり・あきらめ・自己否定・・・そういう“かげり”の心からは何も生まれませんし、“喜ばしいこと”を引き寄せることもできません。この時こそ、家族の理解と協力、自分を見つめ直すこと、導きを信じること、という心の働かせ方をして頂きたいのです。
希望や喜び、愛情の確認というエネルギーが次なる“喜ばしいこと”を引き寄せるのですから。