■1286■憑依についてのメッセージ (03.6.3)
「心のかげりとつながる世界(幽界・暗黒界)」
地上人生で抱くあらゆる感情のうち、特に強く抱き、その感情にとらわれたまま(解消できずに)地上を去ると、払拭できなかった感情そのものの世界に引き込まれてゆきます。憎悪や怨恨、悲嘆、絶望。自己嫌悪、孤独感。欲望、執着。その人の心の内の最もかげった感情が共鳴する世界に引き込まれ、その感情のなかにどっぷりと浸り、違った感情を抱けない状態が続きます。
その期間は地上の時間と同じではありません。状態のみが続くため、その人(霊)にとっては果てなく続くものにしか捉えられません。同じ状態から解放されないことそのものは、抱いたかげりから抜け出るまでの埋め合わせだとも言えます。本来ならば地上人生において越えておかねばならないものだからです。
やがて、その人(霊)の心に一瞬のきらめき――それは地上時代に経験した何がしかの喜び・愛です――が蘇ると、浸っていたかげりの世界から抜け出し、次の段階へと進むことになります。
幽界は、同じかげりを持つものどうしが共鳴して集まって作る世界です。と同時に、地上の人間が抱くかげりと共鳴すればそこに引き寄せられても行きます。抱くかげりが共鳴増幅すれば離れ難くもなります。
"かげり"は本来の霊界にはありません。霊界とは喜びのみの世界だからです。
地上と幽界・暗黒界にあるものだからこそ、両者は互いに影響し合うのです。とらわれたかげりを解消できなければどういう世界へ行き、どうなるのか――。その例を伝えましょう。
<たとえば妬み>
その男は人の幸せそうな笑顔を見るのがたまらなく嫌だった。自分は不幸だと子供の頃から思ってきた。父親は乱暴だ。母親は冷たい。自分をやっかい者としか見ていない。こんなところに何で生まれたのか。まわりの子供たちを羨んだ。しかし、それで自分の状態が変わるわけではない。惨めになる。羨みは妬みに変わり、意地悪を言わずにはいられなくなった。少しでも目につくところがあると言わずにはいられない。当然友達はできず、相手にもされない。
成長しても人との関わりはスムーズにはいかなかった。自分は人から好かれない。それをまわりのせいにしていた。親のせいにもした。愛し合う女性ができ結婚する同僚。祝福され笑顔で応える彼を妬む。何人もの同僚が幸せになっていくなかで、自分は取り残される。
ある時、自分の方がましだと思っていた同僚が間もなく結婚すると知った。優しく気立ての良い女性と。自分にはそんな相手もいないのに、彼にまで先を越されるのか。自分よりも劣っている彼が幸せになるなんて。許せなかった。妬みが燃え上がり、彼の幸せを否定してやりたくなった。相手の女性に関するありもしない噂を流し、彼の耳に入りそうなところでわけありな話をする。傷ついた彼女を慰めるふりをして近づき、さらに傷つける。
元気のない彼の顔を見ると安心した。自分より不幸せな彼をみて安心した。結局この男は誰とも心を通わせることはできなかった。人の幸せを喜ぶことができないばかりか、それを妬み、こわすことまでしてしまう。幸せな者たちを妬みながら自分の不幸ばかりを思う。彼が幸せになれるはずがなかった。自分を改めることなく、省みることもないまま彼は地上を離れた。
それから彼はどうなったか。
ふと気がつくと、まわりは皆、新婚旅行に出かける者たちばかり。皆それぞれに仲睦まじい。寄り添って微笑を交わすもの、楽しげに語り合う者、どこを見ても幸せが溢れている。男は気が狂いそうだった。妬みに苛まれ身もだえした。許せない。誰彼かまわず、つかみかかろうとすると辺りは消えてしまう。気がつくとまた同じ場面が始まる。そのくり返しなかで男は妬みの炎を燃やし続けた。
それからある時、強い力で吸い寄せられるようにある女性のところへ引き込まれた。友人の結婚に妬ましさを抱き、彼女の笑顔に憎しみに近いものを感じた地上の女性だった。
その男と彼女の共鳴が解けるまで数年を要した。男の影響で彼女は嫌がらせや意地悪をせずにはいられなかった。年を追うごとに悪質になるのを彼女は抑えられなかった。男(の霊)と彼女は互いに妬みを増幅し合い、補強し合い、彼女が自分を愛してくれる男性に出会い、彼の愛情によって幸せだと思える日まで離れられなかった。彼女の幸せは、その男にも影響を与え、彼は幽界に戻ることなく次の段階――休眠状態――へと導かれた。
――略――
霊は地上の者に憑依した、ということになります。しかし、霊のせいで憑依したのではありません。問題は霊を引き寄せてしまった地上の者にあります。かげりを抱かずに生きよ、というのは不可能に近い。しかし、抱いてしまったかげりを自らのなかで解消していくことはできますし、すべきなのです。
辛さや苦しさのなかにあっても喜びを見出していくのは非常に難しい。しかしあなた方はそれを学ぶために地上に生まれたのです。地上において、喜びにつながる世界(本来の霊界)と共鳴して生きるために、今、ここにいるのです。